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臨床研修制度 インデックス

小児科 臨床研修について

基本理念と特徴

小児科は必須科目として1年目に1ヶ月間予定している。
小児科では出生直後の新生児から15歳までの小児を対象に医療にあたっています。
「小児」とは大人を単に小さくしたものではなく、各年齢、時期により種々の特性を持ち、それぞれに応じた知識、技術、対応が必要とされます。 更に単一臓器のみに関わるものではなく、心を含む全身の診療にあたることを要求される科であります。小児科研修においては、将来の専攻科にかかわらず小児疾患のプライマリーケアーに関する知識・技術を習得し、その実践・応用が可能となることを目的とします。 特に小児科では患者のみではなく、家族との対応が重要となるため、十分なインフォームド・コンセント、コミュニケーションをとり良好な人間関係を持つことが必要となり、そのための技術習得も目的とします。
大阪府済生会野江病院小児科は、一般診療外来に加え、乳児健診、予防接種、アレルギー、腎臓、神経、内分泌などの専門外来を行っています。毎日の外来診療に多彩な疾患を持つ児が訪れ、入院を必要とされる疾患も急性、慢性を問わず多岐にわたります。救急搬送される児も多く、重症患者の救命にあたることもしばしばです。また病診・病病連携により当科に精査加療目的で紹介され受診、あるいは入院される患者 さんがたいへん多く、地域に根付いた医療を行っています。
日本小児科学会認定の小児科専門医研修協力施設としても機能しており、管理型臨床研修病院、協力型臨床研修病院として小児科専門医が研修指導にあたります。

小児科研修の目標

1.一般目標
  1. 正常小児の発育・発達を理解する。
  2. 小児科疾患の特性を学び、診断・治療の基本を習得する。
2.行動目標
  1. 患者およびその家族(特に母親)と良好な人間関係を築き、適切な医療を行うため十分なインフォームド・コンセントを行い、プライバシーを守る配慮をする。
  2. 医療チームの構成員としての役割を理解し、メンバーとなる医療従事者と適切なコミュニケーションをとり、チーム医療を遂行する。
  3. 適切な病歴聴取技術を習得し、的確な問診を行い、問題対応能力を学ぶ。
  4. 医療現場において医療事故防止、事故後の対処、院内感染対策を理解し、安全管理の方策を身につける。
  5. カンファレンスなどの場で症例を呈示し、討論を行う。
  6. 保険医療制度、小児慢性特定疾患などの公費負担医療についての知識を深め適切な医療を行う。
  7. SOAP方式でカルテ記載を行う。
3.具体的経験目標
(1) 医療面接
  • 周産期、およびその後の成育歴を含めた病歴を聴取し、的確な問診により診断・治療への道筋をたて、不安を持つ保護者に適切な指導を行う。
(2) 診察
  • 小児の正常な身体発育発達・精神発達を理解しその評価をする。
  • 新生児をはじめ小児期全般にわたり年齢に応じた方法で診察し、理学的所見を得る。
  • 視診により全身状態を把握し、緊急性について判断する。
  • 日常遭遇することの多い発疹性疾患、感染症についてその特徴を理解し、鑑別ができるようになる。
  • 意識状態、髄膜刺激症状などの神経学的所見を年齢に応じて得ることができ、痙攣の性状を把握し評価できる。
  • 呼吸器疾患において咳などの症状や聴診所見などにより状態を把握する。
  • 胸部聴診所見により、呼吸状態や心音、心雑音の評価をする。
  • 便性の観察を行い、腹痛、嘔吐などを伴う児において、腹部所見の異常を把握する。
(3) 手技
  • 指導医のもとで乳幼児、新生児を含む小児の採血、皮下注射、筋肉注射、静脈注射、点滴静射、輸液、輸血ができる。
  • 指導医のもとで浣腸、注腸、胃洗浄、腰椎穿刺ができる。
  • 指導医のもとで新生児の臍肉芽の処置、光線療法の適応の判断ができる。
(4) 薬物療法
  • 小児に用いる主要な薬剤に関する知識と小児薬用量・用法の基本を身につけ、処方箋の作成、看護師への指示、保護者への指導ができる。
  • 年齢、疾患に応じた輸液の種類・量を決めることができる。
(5)経験すべき症候、疾患
  1. 一般症候
    体重増加不良  発達遅延  発熱  発疹  脱水  黄疸  チアノーゼ  貧血  痙攣  喘鳴  呼吸困難  便秘  下痢  嘔吐  腹痛  頭痛  咽頭痛  やせ  肥満  など
  2. 新生児疾患
    新生児黄疸  新生児呼吸障害  新生児感染症  低血糖  低出生体重児
  3. 感染症
    急性扁桃炎  気管支炎  肺炎  感染性胃腸炎  麻疹  風疹  流行性耳下腺炎  水痘  突発性発疹  手足口病  ヘルパンギーナ RSウイルス感染症 インフルエンザ  溶連菌感染症  アデノウィルス感染症
  4. アレルギー性疾患
    気管支喘息  アトピー性皮膚炎  蕁麻疹  食物アレルギー
  5. 皮膚疾患
    乳児湿疹  おむつ皮膚炎  伝染性膿痂疹
  6. 神経疾患
    熱性痙攣  てんかん  髄膜炎  脳性麻痺
  7. 腎疾患
    急性腎炎  尿路感染症  ネフローゼ症候群
  8. 循環器疾患
    先天性心疾患  心電図異常  川崎病
  9. 血液疾患
    貧血  血小板減少症
  10. 内分泌・代謝疾患
    甲状腺機能異常  糖尿病  肥満  低身長症
  11. 発達障害・心身症
    精神運動発達遅滞  広汎性発達障害  夜尿症  チック  心因性頻尿  不登校
(6) 小児の救急

小児期に多い救急疾患の基本的知識と処置・手技を習得する。

  • 喘息発作の重症度の判断と応急処置ができる。
  • 脱水症の診断と応急処置ができる。
  • 痙攣の応急処置ができる。
  • 腸重積の診断と整復ができる。
  • 酸素療法、気道確保、人工換気療法ができる。

* 以上の目標は、一般小児科外来診察、専門外来、病棟新生児、一般入院患児にて概ね経験、習得できるものですが、研修時期およびその期間により、流行性疾患や頻度の少ない疾患についてはその限りではありません。 可能な限り多くの目標を達成できるように、担当患者さん以外でも積極的に経験、習得することが望まれます。

主な入院疾患別の割合

疾患分類
気管支炎・肺炎など下気道炎
35.8
新生児疾患
19.9
腸管感染症
11.1 
気管支喘息
5.9
髄膜炎・てんかんなど神経疾患
5.2
咽頭炎・扁桃炎など上気道炎
4.4
腎炎・ネフローゼなど腎疾患
2.6
糖尿病など内分泌疾患
0.4
貧血・紫斑病など血液疾患
0.4
川崎病などの心疾患
0.4
その他
14.0

小児科研修プログラム

スケジュールの例
 午前午後
一般外来診察介助・処置予防接種外来
一般外来診察介助・処置部長回診
アレルギー外来内分泌外来
一般外来診察介助・処置腎臓外来
病棟研修乳児健診外来・カンファレンス

火曜午後:小児心エコー検査
木曜午後:小児腹部エコー検査

小児科研修の到達度の評価

研修医の到達度に関する評価は、研修医による自己評価と担当指導医による評価に基づき行われます。また、臨床研修向上のため、担当指導医に対する評価も行われます。

臨床研修への取り組み

当科の常勤医は全て指導医となる十分な臨床経験を持ち、小児科医特有の優しさにあふれており、全員が臨床研修指導医養成講習会を修了し、指導に当たっています。研修医の将来展望や希望に合わせて研修スケジュールの調整を行い、より高い到達度を得ることを目指し、全ての指導医が一緒に研修する姿勢で取り組みます。
研修時期およびその期間により、流行性疾患や頻度の少ない疾患については経験できないものも存在する可能性がありますが、指導医間の連携により担当患者さん以外でも可能な限り経験、習得することができるよう配慮しています。
電子カルテには診断に必要な理学的所見をもれなく記載できる書式を備えています。
担当医となった患者さんのカルテは、SOAP方式で毎日記載し指導医と共に完成させていきます。毎週金曜夕方に症例カンファレンスを行い、病棟スタッフを交えたショートカンファレンスも随時行っています。

臨床研修終了後

2年間の卒後臨床研修コース(初期研修)を終了後は、大阪府済生会野江病院に就職し後期研修を行うことができます。
小児科専門医になるには、初期研修終了後に日本小児科学会認定の「小児科専門医研修施設」で3年以上の小児科研修を終了して試験を受けます。合格すれば「日本小児科学会認定小児科専門医」の資格を持つことが出来ます。

診療実績

  • 月別小児科患者数

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研修医の皆さんへ

小児科は、新生児から思春期・青年期に至るまでの多様な年齢、時期に対応する必要があり、また心を含む全身臓器疾患が診療対象となります。外来や入院診療で、感冒、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃腸炎などの一般感染症、水痘、流行性耳下腺炎など小児期特有の感染症、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患、その他神経、腎尿路、消化器、内分泌、循環器、心身症、小児救急など多岐にわたる疾患を経験することができます。 専門外来では、各担当医が内分泌、アレルギー、神経、腎臓、循環器疾患などをフォローアップし、乳児健診、各種予防接種も行います。また、院内だけでなく他院で出産した病的新生児の診療も行うので、あらゆる面で十分な臨床経験を積むことができます。院内外の勉強会や学会、交流会にも積極的に参加していただき、経験豊富な臨床研修指導医が、皆さんを親切かつ丁寧に指導します。(2か月の研修期間は希望に応じ変えることができます。)

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