
特任部長 河 源 / 泌尿器科
Q1.泌尿器科とはどのような疾患を扱う診療科ですか?
尿が作られる「腎臓」、腎臓から膀胱までの尿の通り道の「尿管」、尿が溜まる「膀胱」、尿の出口となる「尿道」をまとめて「尿路(にょうろ)」と呼び、これらに発生する腫瘍や結石、細菌感染症などの病気を診療します。
男性生殖器である「前立腺」、「精巣(睾丸)」の病気も泌尿器科で診療します。
Q2.泌尿器科で最も一般的な疾患は何ですか?
脇腹や背中の激痛の原因の一つとなる「尿管結石症」は、一生涯で7〜10人に一人が発症すると言われており、その頻度は食事の欧米化とともに上昇しています。
男性の排尿障害(頻尿、尿がでにくい)の原因となる「前立腺肥大症」も高齢者の増加とともに増えています。
また、「前立腺がん」は現在日本人男性で最も多いがんとなっています。
CTや超音波検査で「腎がん」が偶然見つかることも珍しくありません。
Q3.尿路結石の症状や予防法について教えてください。
左右どちらかの、背中から脇腹の強烈な痛みが突然発生し、吐き気をもよおすことも少なくありません。尿に血が混じり、赤くなることもあります。逆に、症状がほとんどでないこともあります。
尿の中の結石のもとになる成分が多くなると、結晶化し結石が発生します。結石の成分となるシュウ酸や尿酸の摂取過剰や、水分摂取の少なさ(特に夏場)が原因となるため、食事内容や水分の取り方に注意する必要があります。
Q4.尿路感染症の主な原因と予防法について教えてください。
尿路感染症の多くは女性の膀胱炎であり、肛門周囲の大腸菌などが尿の出口から膀胱内に侵入し、膀胱内で増殖することで発症します。
膀胱内で菌が増えてしまう前に排尿することが発生予防につながります。逆に、排尿を我慢したり、水分摂取が少ないために尿の量が少なくなると排尿の間隔が長くなり、膀胱炎が起こりやすくなります。肛門洗浄機の誤った使用方法が発症の原因の一つであるという意見もあります。
Q5.尿失禁の原因と治療法について教えてください。
加齢や出産などにより膀胱の周り(骨盤)の筋肉が弱まり、くしゃみや咳などお腹に力が入ったときに、膀胱にたまった尿をささえきれなくなって尿が漏れる「腹圧性尿失禁」と、膀胱なんらかの刺激を受けて急な尿意をもよおし、トイレに間に合わずに漏れる「切迫性尿失禁」があり、両方が関わる場合もあります。
腹圧性尿失禁の治療は骨盤の筋肉を鍛える理学療法や、手術による治療が中心です。切迫性尿失禁に対しては行動療法や薬物治療が行われます。
Q6.前立腺肥大症とは何ですか?どのような症状がありますか?
前立腺は男性の膀胱の出口にあり、中心部が尿の通り道になっています。加齢とともに前立腺が大きく腫れ、尿の通り道を圧迫するために尿が出にくくなる(排尿困難)ことや、腫れた前立腺が膀胱を刺激して頻回にトイレに行きたくなる(頻尿)などが起こります。夜間2回以上の排尿や、トイレまで間に合わない、尿がちょろちょろとしか出ない、などが典型的な症状です。
Q7.前立腺がんのリスク要因と早期発見の方法について教えてください。
血縁者に前立腺がん、乳がん、卵巣がんの方がおられる場合、前立腺がんになる可能性がやや高くなると言われています。
前立腺がんは血液検査(PSA:ピーエスエー)で見つかることが多く、50歳以上の男性には受けていただきたい検査です。大阪市を含め、多くの自治体で市民検診として受けることができます。大阪市民は、50、55、60、65、70歳になる年度に千円の負担でPSA検査を受けることができます。
Q8.腎臓がんのリスク要因と早期発見の方法について教えてください。
腎臓がんのうち、腎細胞がんはかなり大きくならない限り症状が出現することは少なく、クリニックや人間ドックでの腹部超音波検査や、他の疾患に対して行われた腹部CTなどで偶然発見される機会が多いようです。
Q9.膀胱がんのリスク要因と早期発見の方法について教えてください。
長期間にわたる喫煙歴は膀胱がん発生の大きなリスク要因です。
無症候性血尿といいますが、排尿痛などの自覚症状はないが、赤い尿(血尿)がでることが初期症状であることがほとんどです。血尿に気付いた時は様子をみずに、すみやかに受診してください。
Q10.尿の異常(血尿、頻尿、夜間尿など)がある場合、どのような検査を受けるべきですか?
自分で眼でみてもわかるような血尿があれば、それ以外の症状がなくても、なんらかの病気が潜んでいるといえます。原因となりうる病気はたくさんあり、必ず診察を受けていただく必要があります。頻尿、夜間尿の原因となる病気も多く挙げられます。まずは尿検査や超音波検査など、体にかかる負担の少ない検査から進めていきます。
Q11.泌尿器科の健康診断や定期検査の重要性について教えてください。
これまで述べてきたように、血尿は重大な病気の唯一のサインとなることが多いです。自覚症状がなくても、まずは泌尿器科を受診することが望まれます。日本人男性で最も多いがんである、前立腺がんについては、50歳以上となれば、市民検診等で血液検査(PSA)を受けていただきたいと思います。