
部長 阿部 恵 / 糖尿病・内分泌内科
Q1.どのような症状があれば、糖尿病(最近は「ダイアベティス」といいます)を疑ったほうがよいのでしょうか?
- のどが渇く
「水やお茶の飲む量が増えた」
「水やお茶では物足りず甘い清涼飲料水(スポーツ飲料含む)やアイス、果物を摂取する量が増えた」
「サイダーなど飲んだらとてもおいしいと感じて、続けて飲むようになった」
「口の中がかわいてネチョネチョする」など - 尿の量や回数が増える
「夜に小便をする回数、量が増えた」
「飲む、尿を出す、の繰り返し」 - 食べているのに急に体重が減る
「よく食べているから太ったと思うのに体重を測ったら3kg落ちていた」 - 食後にものすごく眠くなる、疲れやすくなる
「階段を昇るのがしんどい」
「すぐ横になりたい」 - 足がつる(こむら返り)
- 足の裏の感覚が鈍い・ピリピリ感を感じる
などがあればダイアベティス(糖尿病)が疑われます。
Q2.健康診断で「血糖値が高い」と言われましたが、すぐに受診すべきですか?
健康診断で血糖値が高いと言われた場合は、できるだけ早く受診してください。
昔は「糖尿病はおそろしい病気」というイメージがあったかもしれませんが、ダイアベティス(糖尿病)は早期発見、早期治療ができれば正常な状態にまで戻れる場合もあります。また、きちんと治療すれば生涯にわたって病気がない人と同じような生活を送ることができます。
健診で指摘されるのは「症状が出る前に早くわかってよかった」といえるでしょう。
Q3.ダイアベティス(糖尿病)は初期には症状がないと聞きましたが、本当ですか?
はい。ダイアベティス(糖尿病)は初期には症状がない病気です。
症状がないからと放っておくと、数年から10年以上かけて全身の血管がもろくなり、深刻な状態になってしまうことがあります。
「症状がない=大丈夫」ではなく、「症状がないうちに、健診などの数値で早く見つける」ことが、将来の健康を守るために最も重要です。
Q4.ダイアベティス(糖尿病)になると、どのような合併症が起こるのでしょうか?
血糖が高い状態が続くことで、細い血管が傷み、血液の流れが悪くなることから「三大合併症」と呼ばれる合併症を起こすことがあります。
→「し・め・じ」と覚えられます。
- し:神経障害(手足のしびれ、壊疽、顔や眼の動きが右や左だけ麻痺する、など)
- め:網膜症(視力低下、失明)
- じ:腎症(腎臓の働きが悪くなる)
また、動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞など命に関わるリスクが高まります。
→「え・の・き」と覚えられます。
- え:壊疽(えそ)
足の血管が動脈硬化で細く、狭くなり、足指の血流が悪くなり組織が死滅することを壊疽といいます。糖尿病があると、細菌が体に入り、さらに傷が治りにくくなります。 - の:脳梗塞
脳動脈の一部が詰まって血液の流れが遮断され、脳細胞の一部が壊れるため、自分の意思で体を動かす、認知する、調節する、考えるなどができなくなります。 - き:狭心症、心筋梗塞
ダイアベティス(糖尿病)や高脂血症、高血圧で心臓のまわりの血管(冠動脈)の一部が血液の通り道が狭くなって血液の流れが滞る(狭心症)、ふさがる(心筋梗塞)、ことがあります。胸痛がおこることが多いですが、ダイアベティス(糖尿病)がある人は痛みをまったく感じないことがあります。
その他:歯周病や皮膚、粘膜などから侵入した細菌感染症が短期間に悪化したり、その他の感染症にかかりやすくなったりします。
Q5.食事や運動だけでダイアベティス(糖尿病)は改善できますか?薬は必ず必要ですか?
どのくらいインスリンを分泌する能力があるか、ダイアベティス(糖尿病)を発症してからどのくらい経過しているか、などによりますが、一部の方は食事や運動だけでダイアベティス(糖尿病)は改善できることもあります。
まずは診察やお話を聞かせていただき、血液検査や尿検査で病状を評価させていただきます。
Q6.インスリン治療は「重症」というイメージがありますが、どのような場合に行うのでしょうか?
インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を下げるはたらきがあります。
1型糖尿病のある人では、ダイアベティス(糖尿病)の治療薬は原則的にインスリン注射が中心です。
2型糖尿病のある人の場合は、以下の場合に使用します。
- 血糖値がうまく管理できないとき
- 糖尿病性ケトアシドーシスがある、またはそのような状態であることが予想されるとき
- 病気になった時や手術を受けるとき
- 妊娠しているとき
- 腎臓や肝臓の働きが悪いとき
注射薬を使用しているからといって、決してダイアベティス(糖尿病)や合併症が重症であるというわけではありません。むしろ、最近では病状の進行していない早期からの導入も積極的に行われていますし、必要がなくなれば止めることもあります。
Q7.低血糖とはどのような状態ですか?日常生活で気をつけることはありますか?
低血糖とは血中のブドウ糖が少なくなりすぎることで、具体的には血糖値がおよそ70mg/dL未満になった状態です。
はじめは、空腹感、だるさ、その後、冷や汗、動悸(ドキドキ)、ふるえ、体のほてり、不安感、吐き気などがあらわれます。これらの症状は「警告症状」とも呼ばれます。この時に低血糖に気づいて対処すると重い低血糖を防ぐことができます。
さらに血糖値が下がると、脳に必要なエネルギーのもとになるブドウ糖が不足するため、ぼーっとする、眠気、めまい、疲労感、集中力の低下などの症状が出てきます。
さらに血糖値が下がると、意識を失う、けいれん、一時的な体の麻痺(まひ)といった重い症状が出て、長く続くと命にかかわることがあります。
低血糖の症状には個人差があります。低血糖を繰り返すことで体が慣れてしまい、警告症状が現れず、いきなり意識を失うことがあるため注意が必要です。
低血糖はインスリン注射や一部のダイアベティス(糖尿病)の飲み薬を使っているとき、次のようなときに起こりやすくなります。
- 食事の量が少なかったときや食事の時間が遅れたとき
- 運動や仕事などで体を動かす量が多かったとき
- 薬の量を増やしたとき、または薬の時間を変更したとき
- 解熱薬、鎮痛薬、抗不整脈薬などの薬やアルコールを飲んだとき
- 女性では生理(月経)が始まるタイミング
あらかじめ、主治医の先生と相談してインスリンや薬の量の減らし方や補食のとり方を決めておくことが大切です。それでも念のため、低血糖に備え、常にブドウ糖や砂糖を用意しておきましょう。
また、糖尿病がない人でも低血糖が起こることがあります。糖尿病が発症する前に起こりやすくなる食後の反応性低血糖や、膵臓にインスリンを産生する腫瘍ができる病気(インスリノーマ)などの可能性もあります。
Q8.甲状腺の病気とはどのようなものですか?どんな症状に気づけばよいでしょうか?
甲状腺は首の前面中央の下の方に、気管(空気の通り道)を取り囲むようにちょうちょうが羽を広げたような形をしている通常10-20g程度の重さの小さな臓器です。甲状腺は甲状腺ホルモンを合成し血液中に出しています。食べたものをエネルギーに変える代謝の維持、調節や、脳や骨の成長、脂質や糖の代謝に関与する生命維持に重要なホルモンです。血液中の甲状腺ホルモンが多すぎる状態を甲状腺中毒症と言い、次のような症状があらわれます。
- 階段などで動悸がして汗をかきやすい、疲れやすくなる
- 手や足が震える
- しっかり食べているのに体重が落ちる
- 眠れなくなった、イライラする、じっとしていられなくなる
- 朝起きた時に足の力が入らなくて立ち上がれない
などがあります。原因としては、バセドウ病が最も多いですが、他にも様々な病気によって生じます。
逆に、甲状腺ホルモンが低下する状態を甲状腺機能低下症といい、最も多いのは慢性甲状腺炎(橋本病ともいいます)が原因となるものですが、他にもいろいろな原因があります。甲状腺機能低下症では次のような症状が出ることがあります。
- まぶたや顔、手足がむくむ、体重が増える
- 声がかすれる、声が出にくい
- 寒がりになる
- 髪が抜ける
- 便秘
- 疲れやすい
Q9.体重が急に増えたり減ったりするのは、ホルモンの病気の可能性がありますか?
体重が急に増えたり減ったりするのはホルモンの病気の可能性があります。クッシング症候群という副腎のホルモンの病気や甲状腺の病気の可能性があります。
また、今まで高血圧ではなかったのに急に血圧が上がってきた、骨折が多い、月経が不規則、血中のカルシウムやナトリウム、カリウムが高い(低い)、などもホルモンの病気(内分泌疾患)の可能性があります。
Q10.糖尿病や内分泌の病気と長く付き合うために、日常生活で大切なことは何ですか?
どんなに症状がなくても、薬を使っていてよくコントロールできていると言われても、自己判断で薬をやめない、通院治療を中断しないことが最も大切です。
できるだけ睡眠をしっかりとって、食事をバランスよくとり、適度に体を動かすことや気持ちをゆったり保つようにしましょう。
